心房細動の検査・治療について

脳梗塞を起こす可能性のある心房細動には心電図検査での早期発見、治療が大切です。胸がどきどきする動悸を感じたら、すぐにかかりつけ医、もしくは当院の 救急外来 を受診ください。

脳梗塞につながる恐れのある心房細動

心房細動と正常な心臓の図説

本来、心臓の調律(リズム)を司る電気信号は洞結節から生じます。ですが、それ以外のところから異常な電気信号が出てしまい、脈拍が乱れたり、速くなる状態を不整脈といいます。なかでも年齢を重ねるにつれ生じる可能性が高くなるのが「心房細動」です。 これは心房内で速く不規則な異常興奮が生じる疾患で、心拍が不整となり、心拍数が大きく変動します。動悸を自覚することもありますが、全く症状のないこともあり、すぐに命に関わることはあまりありません。しかし、心房内の血流がよどみ、血栓(血液の塊)ができやすくなり、それが流れて脳の血管に詰まると、脳梗塞を起こすので注意が必要です。

心房細動は高血圧、糖尿病、心筋梗塞・弁膜症などの心臓病や慢性肺疾患の方に発生しやすく、アルコールやカフェインの過剰摂取、睡眠不足、精神的ストレスを抱えているときにも起こりやすい病気です。

心電図検査で心房細動の早期発見を

脳梗塞のリスクが高まる心房細動は、発作時に心電図をとることが何より大切です。その診断のためには、通常の12誘導心電図の他に、24時間心電図を記録するホルター心電図や随時自分で心電図が記録できる携帯心電計を用います。
そのほか胸部エックス線検査、採血、心臓エコー検査などを行い、他の疾患が心房細動の原因になっていないか調べます。

アップルウォッチ(Apple Watch)を使用した診療について

applewatchの写真

最近医療機関を受診することなく自分自身で心電図を記録できるアップルウォッチ(Apple Watch)が日本でも使用可能となり、心房細動などの不整脈を記録できる機会が増えてきています。

アップルウォッチは装着中ずっと脈拍を監視し、不整脈をキャッチした時や動悸を自覚した時にすぐに心電図を自ら記録でき、心房細動の診断が可能です。

当院不整脈科では、患者さんがお持ちのアップルウォッチなど家庭用医療機器により記録された心電図などのデータを活用して心房細動の診断に役立てております。もし心房細動と診断されたデータがございましたら是非診察の際にお持ちください。

その際、記録された心電図データを印刷してお持ちいただけるとスムーズですが、心臓内科・不整脈科の診察室でも印刷できますので、お気軽にお声掛け下さい。

  • 当院のプリンターのアプリケーションのダウンロードが必要ですのでデータが保存されている端末(iPhoneなどのスマートフォン)をご持参ください。

心房細動の治療方法

薬物治療

心房細動の治療薬は、以下の3種類あります。

  1. 抗不整脈薬:不整脈が起こらないようにしたり、不整脈を止めたりする
  2. 心拍数調節薬:不整脈は止めずに心拍数が速くならないように調節する
  3. 抗凝固薬:血をさらさらにして血栓をできにくくする

外来で対応できる、薬を飲むだけの簡単な治療で、比較的安価という長所がある一方、抗不整脈薬の抑制・停止効果は50%前後となっています。また、人によっては次第に効果がなくなったり、心拍が遅くなる、血圧が下がる、出血してしまうなどの副作用が生じる可能性があります。

クライオバルーンアブレーション

心房細動のカテーテル治療図解

2018年4月から当院で取り入れている治療法で、現在のところ、発作性心房細動の患者さんに適応されます。今までは肺静脈と左心房の接合部付近から起こる異常興奮に対して、高周波アブレーションカテーテルを用いて一点ずつ焼灼し、肺静脈を電気的に隔離していましたが、クライオバルーンアブレーションでは、肺静脈入口部にバルーン(風船)を押し当て、バルーン内部を液化亜酸化窒素ガスで極低温に冷却し、心筋にダメージを与えて隔離します。

一点ずつ対象範囲を焼灼する高周波アブレーションに比べ、面で冷凍焼灼するクライオバルーンアブレーションは治療時間や透視時間が短縮され、患者さんの負担が軽減されます。この治療法により、発作がなくなれば、抗凝固薬などの内服を中止できる可能性もあります。
発作性心房細動で肺静脈の形状が同治療法に合う患者さんには積極的にご案内しています。