乳房再建手術について

当院ではいち早く施設認定を取得して、インプラントによる乳房再建を可能とするとともに、自家組織を用いた再建も提供しています。手術と同時に再建をする一次一期から、乳房切除後に改めて再建を行うニ次ニ期再建まであらゆる再建パターンを用意することで、患者さんのニーズに応じた乳房再建を提供しています。もちろん小さな病変に対しては、現在も乳房部分切除術を施行しています。適応を絞り、温存した乳腺や近傍の脂肪織を用いた形成を行うことで、整容性を保ちながら負担の少ない温存手術も実現しています。部分切除術で根治性を損なわないためには、腫瘤の部分だけではなく乳管内の広がりも取り切らねばなりません。安全性を重視すれば切除範囲が広くなり整容性が低下します。より安全に小さな切除範囲を実現するためには、精密なMRIや超音波検査による広がり診断が必要です。また、浸潤部が小さく乳管内の進展が広いものは、早期のがんであっても積極的に乳房切除や乳腺全切除を勧め、一期的に乳房の再建を行うケースが増加しています。乳房切除(乳腺全切除を含む)をすることで放射線治療を回避することができるという点が整容性において重要です。

再建手術の方法

再建手術には、一次再建と二次再建があります。一次再建は、乳がんの手術と乳房再建術を同時に行う方法、二次再建は乳がんの手術とは別に再建を行う方法で、それぞれさらに二つの方法に分かれます。

一次一期再建

1回の手術で再建を完成させる方法。乳がんの手術と同時に、インプラント(シリコン)を入れる方法と、自家組織を移植する方法があります。

一次二期再建

乳がんの手術と同時にティッシュ・エキスパンダー(インプラントを挿入する空間を作る機械)を挿入し、2回目の手術でインプラントまたは自家組織を入れて乳房を再建します。

二次一期再建

皮膚と脂肪を付けた自家組織による乳房再建です。

乳房切除後→自家組織移植術後

二次二期再建

1回目の手術でティッシュ・エキスパンダーを挿入し、2回目の手術でインプラントまたは自家組織を入れて乳房を再建します。

各方式の特徴とメリット・デメリットは下の表のとおりです。

スワイプ

再建の時期による分類 再建術の回数による分類 手術方法 特徴 メリット・
デメリット
一次再建
(同時再建)

乳がん手術と同時に行う
一次一期再建
乳がん手術と同時に再建を完了
<インプラント>
乳頭乳輪温存乳房切除術(NSM)を適用できることが条件となる
  • もっとも負担が少ない
  • 乳頭、乳輪が残せない場合は行えない
<メリット>
  • 乳房喪失感が少ない
  • 入院期間が短く、経済的・身体的負担が少ない
  • 一次二期再建では、エキスパンダー挿入中に考える時間がある

 

<デメリット>
  • 一次一期再建ではじっくり考える時間が少ない
<自家組織移植>
皮膚温存乳房切除術(SSM)を適用できることが条件となる
  • 乳頭、乳輪を切除し、皮膚を残してがんをくり抜くように取り除く方法
  • 乳輪の大きい場合に適用できる
一次二期再建
乳がん手術の後に1回の手術で再建を完了
<インプラント>
乳がん手術と同時にエキスパンダーを挿入し、皮膚を拡張後、インプラントと入れ替える
  • 現在、主流となっている術式
  • 再発リスクによっては推奨できない
二次再建
乳がん手術と別の時期に行う
二次一期再建
再建の手術は1回で完了
<自家組織移植>
自家組織を移植して乳房再建を完了する
  • 自家組織は、柔らかく温かい、自然な触感の乳房ができる
  • 手術時間や入院期間が長くかかる
<メリット>
  • 考える時間が十分にある
  • まずは乳がんの治療に専念できる
  • 乳がん手術と別の施設での再建も可能

 

<デメリット>
  • 手術が2回以上になる
  • 経済的負担が大きい
  • 二次一期再建では、新たな傷あとを作る
二次二期再建
再建の手術は2回で完了
<インプラント>
エキスパンダーを挿入し、皮膚を拡張後、インプラントと入れ替える
  • 手術後何年経っても、年齢に関わらず再建できる
  • 手術回数はもっとも多くなる

乳房を切除した場合は、再建手術で乳輪や乳頭の形成も行います。乳輪・乳頭は、切除しない側の乳房の乳頭や陰部皮膚を用いて作成します。