バクロフェン髄注療法(ITB療法)

ITB療法

脳・脊髄疾患に伴う痙性(けいせい)まひは、それ自体の機能障害に加えて、2次的に起こる痙縮(けいしゅく)が患者さんのADL(日常生活動作)を著しく損ないます。従来は、この病態に対して内服による筋弛緩薬の投与が行われてきましたが、薬剤の作用部位への移行が十分ではなく、満足な効果は得られませんでした。

バクロフェン髄注療法(ITB療法)は、脊髄へ直接、筋弛緩薬(バクロフェン)を作用させることによって、より高い効果の得られる治療方法です。具体的には、バクロフェンを入れたポンプを手術によって腹部に埋め込み、ここから薬を流すカテーテルを脊髄まで通します。薬は持続的に微量注入され、注入量は体外からコンピューターによって調整が可能です。
ただし、ポンプへの薬の補充が、およそ2~3カ月に一度必要となります。薬を直接、脊髄へ作用させるので、多過ぎても、急に中断しても、強く副作用が出ることがあります。また、埋め込み型ポンプは比較的大きく、創部の潰瘍や感染を起こすことがありますので、手術後も定期的なチェックが必要です。

この治療方法は、痙性麻痺の症例全てに適応するわけではありません。臨床経過の検討や効果試験を行ったうえで、手術適用が決定されます。 ITB療法はすでに各国で行われており、日本でも2006(平成18)年4月から保険医療として認められています。当院でも、2007(平成19)年11月からこの治療方法を開始しております。治療方法の詳細や適応については、お気軽にご相談ください。

(脳神経外科センター 所長 山本 一夫)