腹腔鏡手術について

消化器がんにも適用される腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術とは、腹壁の小さい創からカメラを入れ、炭酸ガスでおなかを膨らませた状態で映像を見ながら行う手術です。1990(平成2)年頃に胆石の手術に取り入れられて以来、低侵襲(体の負担が少ない)な手技として急速に広まりました。その後、より複雑な手術、特にがんの手術の領域にも及んできました。
腹腔鏡下手術では、カメラが近接するので肉眼よりも微細な構造を見ることができ、がんの転移しやすい組織をより精密に切除できます。さらに、細い血管もよく見えるので出血も抑えられ、従来開腹でないと難しいとされていた食道、肝臓、膵臓の手術なども可能になってきました。低侵襲であるばかりではなく、精密で出血の少ない点もがん治療に役立つと考えられているのです。
無理をして腹腔鏡下手術を選ぶ必要はありませんが、対象となる場合には安心してご相談いただけると幸いです。

腹腔鏡下手術の方法

一般的に、早期発見の胃がんや大腸がん、直腸がんを手術で治療するためには、腫瘍の存在する部分を含めた一定の範囲を取り除き、つなぎ直します。
数年前までは、おなかを20cmほど切り、胃や肝臓、腸をとりまく、おなかのスペース(腹腔)に手を直接入れて、はさみや電気メスを用いて手術を行ってきました。
しかし最近では、腹腔鏡(ふくくうきょう)というカメラとマジックハンドを数カ所に入れて行う腹腔鏡手術が増えてきました。これにより、5cmほどのおへその傷と、4カ所ほどの数mmの傷だけで済む手術が可能になりました。
特に大腸がんや直腸がんでは、傷を小さくすることができ、体にやさしいと言われています。ただし、おなかの中を直接触ることができないという大きな欠点があり、現時点では、マジックハンドは人間の手よりも劣ると言えます。一方で、ハイビジョンのカメラを病巣の奥まで近づけて見ることができ、直腸などの深い部位では、確実性が上がるという利点もあります。
当科では、特に胆石症に対する胆のう摘出術はほぼ全例、大腸がんや直腸がんは可能な限り、腹腔鏡で手術しています。

低侵襲手術で術後QOL良好

オリンパスVISERA

患者さんの状態を鑑み、適用できる患者さんには腹腔鏡手術を行います。皮膚に4~5箇所の小さな穴を開けて行うため、開腹と比較すると低侵襲です。2020年度には、内視鏡手術ビデオシステムを更新し、より精密な手術ができるようになりました。腹腔鏡だけでなく、消化器疾患は治療の選択肢がいくつもあるため、患者さん、ご家族に納得いただけるように自分が患者だと仮定して治癒方法を考えるようにします。

手術適応の相談についても、外科へお気軽に紹介ください。適宜、 消化器内科 と連携のうえ、治療にあたります。