病理検査室

私たちは、病理診断科との連携のもと、細胞診スクリーニング、病理組織標本の作製などを行い、患者さんの疾病の診断・治療のうえで大きな役割を果たしています。知識と技術の維持・向上のため、各診療科および部門間でカンファレンスなどを行っています。
また、「特定化学物質・四アルキル鉛など作業主任者」を配置し、職場環境、健康面への配慮に努めています。

実績

スワイプ

組織診 細胞診 剖検 特殊染色 免疫染色 FISH
2022年 5,246件 4,649件 13件 3,248枚 3,601枚 114件
2021年 5,263件 4,481件 10件 3,257枚 4,130枚 132件
2020年 5,273件 4,009件 20件 2,542枚 3,935枚 123件
2019年 5,824件 4,253件 12件 1,962枚 3,324枚 78件

業務紹介

細胞診スクリーニング

細胞診とは、患者さんの体から採取された細胞を顕微鏡で観察し、異常の有無や種類を判断する検査です。主に、尿や喀痰、体腔液(胸水や腹水)に含まれる細胞や、病変部を綿棒で擦り採取した細胞、注射針で穿刺吸引した細胞などが検査の対象となります。細胞診は、検体採取時に患者さんの体への負担が比較的少なく、「がん」の早期発見には欠かせない検査です。
甲状腺などの穿刺吸引細胞診や気管支擦過細胞診など、病理検査技師が採取時に同席し、良質な標本作製に努めています。
当院では常勤の細胞診専門医の指導のもと、細胞検査士4人が検査を行っています。

細胞診スクリーニング
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また、必要に応じて液状化検体細胞診(LBC)や細胞転写法、セルブロック法などなどの技術を積極的に活用し、免疫細胞化学による詳細な検索も行っています。体腔液細胞診検体では、可能な限り免疫細胞化学による原発巣の推定を行い、迅速かつ効率的な診療に大きく貢献しています。

胸水セルブロック法(肺腺癌)

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病理組織標本作製

病理組織診断とは、内視鏡検査や手術などで患者さんの体から採取された病変組織に対して、病理学的診断を行うことです。診断は病理医が行いますが、私たちはそのための組織標本作製を担当しています。
組織検体は、ホルマリンで固定後、病理医により適切な大きさに切り出され、検査技師が顕微鏡で観察できる染色標本を作製します。また、病理医の指示により、免疫染色や特殊染色などを行っています。
術中迅速病理診断では、手術中に採取された組織の一部である体腔液などの細胞診検体を迅速に標本作製し、病理診断結果を30分程度で執刀医に報告しています。手術前に病理診断がついていない場合や、手術方針の決定、病変が取り切れたかどうかの確認などに、術中迅速診断は役立っています。私たちは、迅速かつきれいな標本作製を心掛け、正しい診断というゴールをめざして日々奮闘しています。

病理組織標本作製

当院では各種特殊染色、免疫組織化学染色のほとんどを院内で実施しています。免疫組織化学については150種以上の抗体を保有し、随時新規抗体を導入して日々進歩する病理診断のニーズに応えるべく努力しています。また、自動免疫染色装置を導入して染色の安定化・効率化を図るとともに、コントロール切片を用いた染色性の管理など、精度管理にも力を入れています。二重染色法や迅速免疫染色法などの高度な技術についても日常的に行っており、病理医の指導のもと、各症例・状況に応じた標本作製を行っています。

HER2免疫染色
HER2免疫染色

HER2タンパクの発現を調べることで分子標的治療薬の適応について判定することができます

CD3とCD20の二重免疫染色法
CD3とCD20の二重免疫染色法

T細胞(赤色)とB細胞(茶色)の局在を同時観察することができます

calretinin蛍光抗体法とCDKN2A FISHの二重染色法
calretinin蛍光抗体法とCDKN2A FISHの二重染色法

calretinin陽性の悪性中皮腫細胞ではCDKN2A遺伝子の共欠失がみられます

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近年の遺伝子解析技術の進歩により、腫瘍と遺伝子の関連が明らかになってきました。当院ではFISH法(Fuluorescence in situ hybridization法)を院内で実施しており、治療薬適応の評価や腫瘍の悪性度の評価など、より詳細な検索に尽力しています。

HER2 FISH
HER2 FISH

HER2遺伝子の増幅を調べることで分子標的治療薬の適応について判定することができます

BCL2 FISH
BCL2 FISH

悪性リンパ腫における遺伝子異常を調べることで腫瘍の性質を詳しく調べることができます

Urovysion®
Urovysion®

細胞の遺伝子異常を調べることによって尿中の尿路上皮癌細胞を検出することができます

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腎生検は、ネフローゼ症候群など、多くの腎臓病の診断に不可欠で、その標本作製には、特に高い技術や経験が必要です。私たちは病理医とともに腎生検の診断に積極的に取り組み、良質な標本作製に努めています。検体採取時には病理検査技師が手術室に出向し、適切に組織が採取されているかを腎臓内科医とともに顕微鏡で確認し、必要に応じて切り分け作業を行っています。また、蛍光抗体法もすべて院内で実施しており、迅速な診断報告にも寄与しています。

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病理解剖の介助・標本作製

亡くなられた患者さんの死因・病因の究明などを目的に、ご家族の承諾を得て行う病理解剖では、病理医の指導のもと、剖検介助および標本作製を行っています。当院では幅広い診療科を有することから、その目的も多岐にわたります。幅広いニーズに応えるための標本作製技術の研鑽に励み、より詳細な検索に寄与すべく日々努力しています。特に、神経変性疾患などの中枢神経組織の検索については特殊な標本作製技術が必要になる場合がありますが、当院では中枢神経組織を含むほとんどすべての標本作製を院内で実施しています。また、肉眼所見が重要な病理解剖において、目的に応じて大型標本の作製も行っています。

ホルツァー染色

組織障害に伴うグリオーシスがみられます(青紫色)

ガリアス・ブラーク染色

アルツハイマー病に特徴的な神経原線維変化(NFT)がみられます(黒色)

心臓の大型標本(アザン染色)

陳旧性病変と急性病変の局在が明瞭であり、肉眼所見との対比に有用です

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教育・学術活動

私達は、大学や専門学校など、近隣の臨床検査技師養成機関と協力して地域の人材育成にも力を入れています。学生実習の受け入れをはじめとして、臨床検査技師養成課程の非常勤講師として人材を派遣したり、地域の勉強会で講師を務めるなど、社会貢献に努めています。また、学会などの学術集会での研究発表や論文などの執筆活動も積極的に行っており、日々の業務のみならず、自己研鑽や臨床検査技術の発展に貢献すべく、精力的な活動を行っています。