血管手術

腹部大動脈瘤に対する手術

正常腹部大動脈(左)と腹部大動脈瘤(右)

大動脈瘤は、ある程度大きくなると破裂の危険性が生じてきます。治療が推奨される大きさの目安は腹部では5cm以上ですが、大きさだけではなく、動脈瘤の形態や、拡大する速度も考慮する必要があります。動脈瘤を根本的に治療するためには以下の2つの方法があり、それぞれの長所と短所があります。

血管外科手術による治療

全身麻酔下で、拡大した血管を切り取り、人工血管に換えてしまうのが血管外科手術です。従来から行われており、手術の危険性と患者さんの体への負担(侵襲)は伴いますが、手術方法はほぼ完成しています。外科手術成績は近年著しく向上しており、手術から5年後・10年後といった長期の成績についても明らかになっています。

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血管

ステントグラフト内挿術(カテーテルによる血管内治療)

ステントグラフト内挿術(カテーテルによる血管内治療)

ステントグラフトとは、外科手術に使用する人工血管と同様の布を、金属ステント(筒状の金網)に縫い合わせて作成した、特殊な人工血管のことです。
局所麻酔下にそけい部(足の付け根のやや上の部分)を小さく切開し、左右の大腿動脈からカテーテルを通し、それを介してステントグラフトを動脈内に挿入します。これを動脈瘤の前後にまたがる形で留置することにより、動脈瘤の内部はステントグラフトの中だけ血液が流れるような状態になります。これにより、動脈瘤にかかっていた血圧が急激に低下し、動脈瘤の拡大や破裂を予防できます。
この方法は、従来の外科手術と比較すると、患者さんの体への負担が極めて軽いという特徴があり、重い心臓病や呼吸器疾患など、ほかの病気のために今まで外科手術を見合わせておられた方や、ご高齢の患者さんでも治療できるという長所があります。一方で、動脈瘤の形態によっては治療の難易度が大きく異なり、治療が不可能であったり、外科手術の方が望ましい場合もあります。また、今のところ新しい治療で、歴史が浅いため、外科手術ほど長期成績が明らかにされていないという問題点があります。

ステントグラフト内挿術(カテーテルによる血管内治療)
(左から)ステントを大動脈瘤(膨らんだ部分)に挿入し、膨らませていきます

血管外科手術とステントグラフト内挿術、いずれの治療が適しているかは、個々の症例ごとに異なります。そのため、治療法の選択は、両方の治療に精通している医師と検討することが望ましいと思われます。

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胸部大動脈に対する手術

正常腹部大動脈(左)と腹部大動脈瘤

胸部大動脈瘤、大動脈解離などで悪くなった大動脈を、人工血管に交換します。急性解離や破裂例などは、24時間体制で緊急手術を行っています。