骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤)
について
骨盤臓器脱(Pelvic Organ Prolapse: POP 子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、子宮摘出後の腟断端脱)は骨盤内支持組織(子宮や膀胱、直腸を支えている筋肉や靭帯)の裂傷や緩みが原因で腟口から子宮・膀胱・直腸などが脱出する女性特有の疾患です。その理由や背景として多産、巨大児分娩、重量物を運搬する職業(農業、運搬業務、介護職など)、高齢などがあります。骨盤内臓器脱は外陰違和感、下垂感や排尿困難・頻尿・尿失禁・便秘などの症状を伴うことが多く、入浴時や排便困難時に腟口にピンポン玉のような腫瘤を自覚して診断されることもあります。
ロボット支援下仙骨腟固定術(RSC)/腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)
全身麻酔をかけ 腹腔鏡下 または ロボット支援下 で手術します。小型カメラを用い、大きくお腹を開かないため小さな傷で行えます。子宮の一部を切断し、残った部分(子宮頸部)にメッシュを固定し仙骨前に引っ張り上げ固定します。腟管を引っ張りあげることで下がっていた膀胱・直腸も引き上げらます。子宮筋腫や卵巣の治療も同時にすることができます。国内でも2016年から保険適応となっており当院では2019年より行っています。子宮頸部は残るので子宮頸がん健診は必要です。
治療スケジュール
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1 初診
- 外来で婦人科診察(内診、がん検診)をします。治療方法のご相談をします
- 手術を希望された場合は骨盤MRIを撮像します。
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2 再診1
- 手術方法について相談し、手術日程を決めます。
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3 再診2~3
- 術前検査(血液検査、胸部レントゲン、心電図)を行い手術の詳細について説明します。
- 麻酔科の外来で全身麻酔について説明します。
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4 治療
- 約1週間程度の入院治療が必要です。
- 手術翌日より食事、歩行など日常生活は可能です。
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5 再診4
- 術後は通院で経過観察します。
合併症
術中/術後出血、感染症、副損傷、癒着、深部静脈血栓症・肺塞栓症、尿失禁の増悪や出現など
【注意点】糖尿病がある方は感染リスクがあるためこの治療は受けられません。
その他の治療方法
手術を希望されない方や全身状態で長時間の手術ができない方など、お一人お一人にあわせたオーダーメイド治療を行っています。
リングペッサリー留置(保存的治療)
骨盤臓器脱専用のリング状の医療器具を腟内に留置して臓器の下垂を防ぎます。使用するペッサリーのサイズは患者さんそれぞれに合わせて選んでいきます。まれにサイズが合わない方もおられますが、多くの場合は外来での挿入が可能です。年齢や持病のために手術を受けられない方や保存的治療を希望される方には特に推奨されます。留置中はおりものが持続することがあります。放置すると腟壁に潰瘍がでたり出血が持続したりする場合があります。定期健診(3~6カ月に1回)が必須です。
腟式子宮全摘、前後腟壁形成術
子宮を腟から切除し、伸びてしまった腟壁を縫い縮める手術です。お腹を開かずに経腟的に行えるので高齢な方や持病で腹腔鏡の手術ができない方に行います。卵巣は一緒に摘出することはできないので卵巣の治療は一緒にできません。また、手術後しばらくして再発することがあります。
腟閉鎖術
腟口を手術で閉じて、骨盤臓器の下垂や脱出が起こらないようにする手術です。お腹を開かずに経腟的に行えるので高齢な方や持病で腹腔鏡の手術ができない方に行います。腟を閉鎖してしまうので性行為やがん検診の検査はできなくなります。