ロボット支援下手術

2018年4月に手術支援ロボットによる子宮全摘出術、さらに2020年4月からはロボット支援下仙骨腟固定術が保険の適用対象となり、女性特有の病気に対する治療の選択肢が広がりました。
当院産婦人科では手術支援ロボット「ダヴィンチ(da Vinci Xi)」を使った特定の子宮の病気に対する手術に対応しています。

手術支援ロボット「ダヴィンチ」について

ダヴィンチは米国で開発された、内視鏡手術を支援するロボットです。医師がこの手術支援ロボットを遠隔操作して行う手術をロボット支援下手術といいます。
人の手首よりも圧倒的に広い可動域、精度の高い操作性で複雑な作業が可能です。

手術支援ロボット
ダヴィンチ(da Vinci Xi)
洛和会音羽病院産婦人科におけるロボット支援下手術の様子

対応可能な疾患

婦人科領域では下記の疾患に対してロボット支援下手術を実施しています。

良性疾患に対する子宮全摘

子宮筋腫

子宮筋腫は比較的若い方から閉経後の方まで高頻度に見られる良性腫瘍です。特に症状もなく、健康診断で偶然指摘されることもあります。妊娠の希望や予定がなく、子宮温存の必要性がない場合は、病変の大きさや可動性の有無などを考慮のうえ、子宮全摘出術も選択肢の一つになります。

子宮腺筋症

出産経験のある40歳代に多いといわれ、子宮内膜に似た組織が、何らかの原因で子宮筋層内にでき、増殖する病気です。症状が軽い場合は、薬で月経痛を軽減させたり、ホルモン治療を行いますが、重い場合は子宮全摘術などを行います。

子宮頸部高度異形成

子宮頸部高度異形成は子宮頸がんになる前段階の状態です。子宮頸がんは文字通り子宮の頸部に発生し、一部のヒトパピローマウイルスの感染が原因となって引き起こされることが知られています。同ウイルスによって生じた異形成の一部は軽度から高度異形成へとゆっくり進行し、がんになります。軽度・中等度の方は定期的な経過観察を行いますが、高度異形成の場合は、手術による子宮全摘出術などの治療をお勧めします。

子宮内膜異型増殖症

エストロゲンという女性ホルモンの働きが過剰になることで、子宮の内側を覆っている子宮内膜という粘膜組織が過剰に増殖してしまう病気です。がんになる手前の状態とされており、子宮体がんに進行するリスクが高く、また、既にがんが隠れている場合も少なくありません。妊娠の希望や予定がなく、子宮温存の必要性がない場合は、子宮を摘出するのがよいとされています。

骨盤臓器脱

肥満や加齢などが原因で子宮などの臓器を支える筋肉が緩んでしまい、一部もしくは全部が腟や肛門から脱出してしまう病気です。子宮が飛び出してしまう、子宮脱の治療には保存治療としてペッサリーリング、骨盤サポーターやクッションの使用、さらに骨盤底筋群のトレーニングなどがあります。当院では、入院期間が短く外陰の痛みがないというメリットのある「腹腔鏡下(あるいはロボット支援下)仙骨腟固定術」も行っています。

子宮体がん(導入予定)

子宮体部から発生するがんで比較的高齢の方が罹患しやすく、閉経後あるいは更年期での不正出血がある時には特に注意が必要です。初期の子宮体がん手術には手術支援ロボットの保険適用があります。

メリット

患者さんの身体にかかる負担を少なくし、術後の早期回復・早期社会復帰に大きく貢献します。

傷口が小さい

患者さんの体を大きく切開する開腹手術とは違い、鉗子を挿入するための小さな穴を数か所切開するだけで済みます。傷が小さく出血量が抑えられるため、手術後の回復が早く、入院期間が短くなります。

精度の高い手術を実現

ダヴィンチの鉗子は、人間の腕や手首・指先のような役割を担い、医師の思いのままに細かく動きます。ロボットにしかできない関節の360°回転なども可能。また、最大約10倍のズーム機能によって患部の拡大3D(三次元立体)画像を見ながら手術を行うため、骨盤内の狭い空間でも、スムーズかつ安全性の高い手術が可能です。

医師の負担を軽減

座って手術が行え、手振れ防止機能が搭載されているため医師の負担も軽減。長時間、高い集中力を必要とする手術の正確性を高めます。

患者さんとともに考えます

手術支援ロボットを使った治療以外にも、患者さんの状況に合わせて開腹手術・腹腔鏡手術などさまざまな選択肢があります。子宮頸がんなどの悪性腫瘍については早期発見・早期治療が大切なのは言うまでもありませんが、骨盤臓器脱は生活の質に関わる病気ですので、早めの治療が日ごろの笑顔につながることもあります。
お困りのことがありましたら、ぜひご相談ください。

伊藤 美幸 医師

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