対応疾患 喉頭癌

1. はじめに

前任地の大阪医科薬科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科にて、喉頭癌の臨床と研究を精力的に行い、過去約25年間に500例を超える診断と治療を行ってきました。喉頭癌は、声帯あるいはその周囲のできる癌であり、喫煙と深い関係があります。 喉頭癌には、声帯にできるもの(声門癌)と声帯より上方にできるもの(声門上癌)があります。 /3を占めています。その他、歯茎(歯肉癌)、舌の下方(口腔底癌)、頬の粘膜(頬粘膜癌)などがあります。

2. 症状

一番の症状は声がれ(嗄声(させい))です。 特に声帯にできる癌(声門癌)では、早期から声がれが生じます。 進行すると、呼吸困難をきたすことがあります。 その他の症状として、嚥下時痛、のどの違和感、嚥下困難感、頸部腫脹(頸部リンパ節転移)などがあります。

3. 診断

1. 視診

外来での視診で喉頭癌を疑うことができます。ファイバースコープ(耳鼻咽喉科のものは細く、鼻から挿入します。外来で簡単にできます)で容易に観察し診断することができます。

2. 病理診断

確定診断には、腫瘤のごく一部を切除して、病理組織診断(顕微鏡の検査)に提出します。のどの反射の強い方では、入院のうえ全身麻酔で行うことがあります(30分程度)。

3. 画像診断

喉頭局所および頸部リンパ節転移の検査は造影CT、超音波エコーによって診断します。頸部リンパ節転移が疑われたときは、同部位から針生検を行うことがあります。

4. 治療

口腔癌(舌癌)に治療の主体は手術切除です。

大まかには、早期がんでは放射線治療、進行癌では手術になります。放射線治療の場合音声は温存できます。放射線治療は、一番早期(T1)で約90%、やや進んだもの(T2)で約80%の制御率です。声門癌は声門上癌より予後が良好です。他の癌と同様、早期に癌を発見することが重要です。

5. 治療成績

大阪医科薬科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科にて診断・治療を行った喉頭癌519例の治療成績を示します。 ステージは進行度を表し、数字が大きいほど進行癌です。 声門癌のステージ別の5年生存率は、ステージIで97%、ステージIIで94%、ステージIIIで76%、ステージIVで59%です。

声門上癌のステージ別の5年生存率は、ステージIで100%、ステージIIで91%、ステージIIIで73%、ステージIVで52%です(図2)。 なお、リンパ節転移の有無(N分類)が生存率に大きく影響します。

6. 術後合併症

喉頭癌で喉頭全摘をした場合、声を失うことになります。代用発声として、電気喉頭、食道発声などがあります。その他、呼吸経路がかわること(気管孔:ネクタイの結び目の位置に直径数cmの穴=新たな呼吸口)、においが分かりにくいことなどが挙げられます。放射線照射後に腫瘍が残存、再発した場合、喉頭摘出を行うことがありますが、その場合(放射線照射後の場合)術後合併症がやや多くなります。