アレルゲン免疫療法外来(舌下免疫療法)

概要

  • 「スギ」または「ダニ」アレルギーがあり症状にお困りの患者さんが対象です。
  • スギ花粉飛散時期を避けた6~11月に開始します。
  • アレルゲンを少量から投与することで体質を改善し、長期寛解・治癒を目指す根治治療です。
  • アナフィラキシーなどの副作用の可能性があります。
  • 治療期間は2年以上(3~5年間)、1カ月に1回受診し、毎日1錠を服薬します。
  • 約8割の患者さんに有効性が確認されています。

アレルゲン免疫療法とは

相木先生

アレルギー性鼻炎は、アレルゲンと呼ばれる原因物質(ダニやスギ花粉など)によって引き起こされます。
アレルゲン免疫療法とは、患者さんのアレルギーの原因となっているアレルゲンを、少量から徐々に量を増やして投与していくことにより、体をアレルゲンにならして、アレルギーによる症状を和らげる治療法です。
長期にわたり症状を抑えたり(長期寛解)、症状をなくす(治癒)といった根本的な体質改善が期待できる根治治療です。

アレルゲン免疫療法には、舌下免疫療法と皮下免疫療法があります。
当院のアレルゲン免疫療法外来では、スギまたはダニアレルギーの患者さんを対象に舌下免疫療法を行っています。

舌下免疫療法とは

シダキュアスギ花粉舌下錠 ミティキュアダニ舌下錠

皮下免疫療法が皮膚の下に注射で治療薬を投与するのに対し、舌下免疫療法は舌の下に治療薬を投与します。そのため、皮下免疫療法のような痛みはなく、初回以降は自宅で服用できます。

具体的な方法としては、まず、問診と血液検査または皮膚テストで患者さんのアレルギーの原因(アレルゲン)を確かめます。また、治療が受けられない項目(重症喘息、妊婦など)がないかを確認します。

そして、服用用量や服用方法、副作用に対する対応などを外来で一緒に確認します。
服用方法は、1日1回舌下に薬剤を投与します。投与後は1~2分舌下に薬剤を保持してから、飲み込みます。その後5分間は飲食を控えます。

副作用が起こる可能性が高い初回投与は外来で行い、服用後30分間は医師の監視下で待機します。翌日以降は自宅で患者さん自身が投与しますが、日中やご家族のいる場所での投与を勧めています。
投与前後2時間程度は入浴や飲酒・激しい運動は控えます。
治療期間は、2年以上で、3~5年が推奨されます。

対象

スギまたはダニアレルギーの症状でお困りの方

  • アレルギー診断が正確になされ、臨床症状が感作アレルゲンと合致している患者さんが対象です。

特にこんな方にお勧めしています。

  • 治療期間が長くても、アレルギー体質改善による根治を希望される方
  • 内服薬や点鼻を使用しても症状が抑えられずつらい方
  • 内服薬の副作用にお困りの方
  • レーザー治療といった手術に抵抗がある方、または行っても症状が改善しなかった方

対象年齢

年齢制限はありません。

  • 医師の指示を理解し、従えるようになる5歳~が目安です。

特にこんな年齢の方にお勧めしています。

  • お子さん
    重度のアレルギー性鼻炎は子どもの成長発達に影響を及ぼすことがあります。
  • 妊娠前の青年期の女性
    特に妊娠年齢に至る前の青年期に体質改善を行い、妊娠前までに薬の減量・離脱を目指します。

効果

一般的に舌下免疫療法を含むアレルゲン免疫療法では、8割前後の患者さんで有効性が認められています。内服薬や点鼻薬、点眼薬、レーザー手術はあくまで一時的な局所の症状を抑えるだけで、根本的な治療ではありません。
根本的な体質改善(長期寛解・治癒)を望む患者さんには積極的にお勧めしています。

症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり、涙目、目のかゆみ)の改善
アレルギー治療薬の減量
治療終了後の長期的な効果の持続
アレルギー反応の抑制

治療期間

治療期間は2年以上、3~5年が推奨されています。また、投与を1カ月以上中断した後、再開する場合は、医師に相談する必要があります。
ダニアレルギーのみお持ちの方以外は、スギ花粉飛散時期を避けた6~11月に開始します。

安全性について

副作用としては、投与部位である口腔内の腫れ、かゆみなどの違和感が最も多くみられます。特に投与後少なくとも30分間、投与開始初期のおよそ1カ月間は注意が必要です。
これらの副作用は投与後数時間で自然回復することが多いですが、症状が長時間持続する場合は治療を継続するか患者さんと相談します。
また、舌下免疫療法では重篤なアナフィラキシーが起こることは非常にまれですが、万が一、強い副作用が現れた場合は 救命救急センター・京都ER にて救急処置が可能です。

アレルゲン免疫療法外来 診察の流れ

1. [初診]耳鼻咽喉科・頭頸部外科の一般外来を受診

まずは耳鼻咽喉科 一般外来を受診いただき、禁忌がないか問診や検査で確認します。
外来のご予約は下記をご確認ください。

禁忌

  • 本薬剤でアナフィラキシー・ショック歴のある方
  • 重症ぜんそく(1秒率70%以下)
  • 妊娠中の開始

要注意項目

  • 重症アトピー性皮膚炎
  • 重症食物アレルギー
  • 総lgE5000UA/ml以上の高値
  • スギ・ダニ以外のlgE高値でアレルギー体質が強い場合
  • 悪性腫瘍または免疫系の全身性疾患(自己免疫疾患、免疫複合体疾患または免疫不全)

また、内服薬・既往歴を確認します。おくすり手帳をご持参ください。

2.アレルギー採血

採血を行い、アレルギーの確認をします。他院で採血された方は結果を持参ください。

3.[再診]アレルゲン免疫療法外来を受診

火曜日 午後1時30分~

初回は説明および内服のあとに副作用が起こらないか観察するために2時間程度かかります。

4.定期受診

1カ月に1回受診ください。初回以降は通常外来でも対応可能です。
また、当院への通院が難しい場合は、かかりつけ医へのご紹介も可能です。

よくあるご質問

Q1

スギ花粉アレルギーの舌下免疫療法の開始時期は?

A1

6~11月に開始します。
理由は…

  • スギ花粉の時期は過敏になっており副作用が起こりやすいため。
  • 花粉が飛び始める3カ月前から開始すると効果が高いため。
Q2

開始年齢は? 年齢制限はありますか?

A2

年齢制限はありません。
しかし、5歳以下では安全性は確認されていません。
医師の指示に従えるようになる5歳からが目安です。高齢者は若年者より効果は落ちるとされていますが実施は可能です。
繰り返す滲出性中耳炎による聴力低下、口呼吸による虫歯や顎発達への影響、睡眠障害、集中力低下による学習障害など、重度のアレルギー性鼻炎により成長発達に影響のあるお子さんは積極的にご検討ください。
また、女性には妊娠前の青年期に開始をおすすめしています。妊娠中は妊娠性鼻炎を併発し鼻炎性症状が重くなることがあることがあります。妊娠中に内服薬を使いづらいため、妊娠前までに体質を改善し、使用薬剤の減量を目指します。

Q3

妊娠や授乳への影響はありますか?

A3

妊娠時:妊娠中の開始は禁忌! 維持期は問題ありません。

治療開始1週間以降の維持期に薬を要する副作用が起こることはまれであり、維持期での妊娠は問題ないとされています。
しかし、妊娠期間だけ中断し、出産後に最初からやり直して再開しても1年遅れになるだけで問題ありませんので、中止するかどうかは患者さんと話し合って決定します。

授乳時:問題ありません。

日常生活で乳児はスギ花粉やダニ粉骸を吸っていますので、授乳によって多少アレルゲンが赤ちゃんに移行しても問題となることは考えにくく、治療を継続して問題ないとされています。

Q4

高齢者にも適応できますか?

A4

高齢の方も適応です。
しかし、一般的に免疫・生理機能が低下しており、十分な治療効果が得られない可能性があり、65歳以上では効果が低くなる可能性があります。
また、下記の点に注意が必要です。

  • 現存の心肺疾患がある場合が多いので、舌下免疫療法導入時の副作用などに注意が必要です。
  • 服用中の薬との相互作用に注意が必要です。
Q5

口やのどの炎症、ステロイド治療、旅行などによる休薬や飲み忘れた場合はどうしたら良いですか?

A5

基本的に1カ月以内であれば問題ありません。
1カ月以上の休薬があれば、初回導入量から開始します。7割程度(週5日程度)内服できていれば効果は変わらないとされています。気負わず続けてください。

Q6

ダニアレルギー治療とスギ花粉アレルギー治療との併用はできますか?

A6

併用可能です。
ダニ舌下錠は局所アレルギー反応が出やすいため、ダニ舌下錠から開始して数カ月経っても問題なければ、スギ舌下錠を併用します。
(服用例)7月~ダニ舌下錠開始。副作用がなければ、10月~スギ舌下錠開始。

Q7

効果は治療前に予測できますか?

A7

できません。
患者さんの背景因子や採血検査、重症度、年齢などでは予測できないことが分かっています。現在、予測因子や効果判定する指標については研究段階です。

Q8

スギ花粉舌下免疫療法はヒノキにも効果がありますか?

A8

効果がないこともあります。
スギは正式にはヒノキ科スギ属であり、スギとヒノキの花粉アレルゲンは似ているものもあります。しかし、最近の研究で、スギとヒノキは主に作用するアレルゲンが異なるため、スギ花粉舌下免疫療法を行ってもヒノキアレルギー反応は改善しない例があることが分かっています。

Q9

アレルギー性鼻炎の治療と併用をすると影響はありますか?

A9

問題ありません。
抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイド点鼻薬は舌下免疫療法に影響しません。 長期の内服ステロイド併用は原則回避しますが、短期間の使用は問題ありません。また、局所ステロイド(点鼻、点眼、軟こう、吸入)は支障ありません。

参考文献

  • 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会「鼻アレルギー診療ガイドライン」
  • 日本アレルギー学会「スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き」