前立腺肥大症

前立腺肥大症は、初老期以降の男性に起こる疾患です。男性には、膀胱のすぐ下にクルミ大の前立腺という臓器があります。この前立腺の真ん中を尿道が走っていますが、加齢に伴い、前立腺の肥大が起こってくると、排尿障害が出現することがあります。

前立腺肥大症の治療は、大きく分けると、薬物療法と手術療法があります。薬物療法によく反応して、排尿状態が改善する場合もありますが、あまり薬に反応せず、排尿困難が進行する場合もあります。この様な場合には、手術療法が適応されます。

手術療法に関しては、開腹手術と非開腹手術に分けられますが、非開腹手術のなかで、ゴールドスタンダードとなっているのが、経尿道的前立腺切除術(TUR-P)です。この手術は、簡単に言うと、尿道から切除鏡という手術用の内視鏡を挿入して、腫れた前立腺を削る手術です。

開腹手術とTUR-Pのどちらを選択するかについては、施設によって基準が異なると思いますが、教科書的には、前立腺重量が30~50g以下ならTUR-Pを、それ以上では、開腹手術を選択するというのが一般的です。

最近、当科では、TUR-P施行の際、生理食塩水(電解質溶液)を使用しての手術が可能なTUR-is systemを採用しております。従来のTUR-Pでは、潅流液として非電解質溶液を使用する必要があり、合併症として、水中毒を起こす可能性があることが大きな問題点でした。TUR-is systemにおいては、潅流液に生理食塩水を使用することから、水中毒を起こすことはほとんどありません。さらに、2007(平成19)年ごろから、この器械を利用して、あらかじめ前立腺腺腫を被膜から核出してから切除を施行するという手術方法(TUEB)を行っています。

TUEBにより、100gを超える大きな前立腺に対しても、安全に手術が施行できるようになりました。その結果、当科においては、前立腺肥大症に対する開腹手術は過去のものとなりつつあります。

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