京都顎変形症センター
概要
一般に、下顎が前に伸び過ぎていたり、あごが小さいなどの理由で、上下の歯の噛み合わせが大きくずれてしまっているような場合は、「顎変形症」と総称される病気の可能性があります。原因にはさまざまなものがありますが、噛み合わせがずれていればうまく噛めない、言葉が発しづらい、食べ物の消化が悪いなどの障害がでてきます。また、容貌に関しても悩んでおられるかもしれません。そのほかにも、前歯が出ている場合やあごが横にずれている場合なども、さまざまな問題を引き起こします。
まだ小さい子どものうちは、歯の矯正で対処できることもありますが、成人してからは、時間的・社会的な制約だけでなく、医学的な理由からも、なかなか治療することは難しくなってきます。
現在は、このような方々に対して、矯正治療と手術を組み合わせる方法、すなわち『顎矯正手術』を行うことで、治療が可能になっています。治療の基本は咀嚼(そしゃく)機能の回復(よく噛めること)、顎を含む顔面の形態的異常を修正することにあります。
正常な口腔機能の回復とともに、「審美」という面からも患者さんにご満足いただけるよう、私たちがお手伝いします。
顎変形症手術Web申込み
顎変形症手術Web申込みについては下記よりご確認ください。
申込みはこちら顎矯正手術の種類
顎=あごの骨の手術には、下顎骨(下あご)を動かす手術と、上顎骨(上あご)を動かす手術、歯槽骨(しそうこつ)・個々の歯を動かす手術およびその補助的な手術があります。
主な手術法の特徴を簡単にご紹介します。
1.下顎に行われる手術
下顎枝矢状分割法
下顎を大きく後方または前方に動かす手術です。回転によって、開咬(前歯が噛みあっていない)の治療も行えます。術後は早期に口を開けられる手術ですが、オトガイ部(下唇からあごの先にかけて)に知覚異常を生じることがあります。
下顎枝垂直骨切り術
下顎の非対称(左右のゆがみ)を治したり、後方に動かしたりできる手術ですが、前方に動かすことには不向きです。顎関節症(口を開けると音がする、痛いなど)の改善にも効果的で、オトガイ部の知覚異常が少ないとされていますが、術後2週間程度は口を開けられません。(その間は流動食ですが、会話は可能です)
逆L字型骨切り術
上記二つの手術の中間的な特徴をもった手術です。前方に動かす際には、骨片の間に骨移植を必要とする場合があります。
下顎骨延長法
下顎を上記の下顎枝矢状分割法より、さらに大きく前方に動かすことが求められる場合に行います。延長のために埋め込んだ装置を毎日少しずつ延ばすことで、皮膚や筋肉も一緒に延びてきますが、装置を外すための2回目の手術が必要です。
オトガイ形成術
オトガイは下顎骨の最前方部で、この部分をほかの下顎から切り離して主に前方に動かす際に施行されます。この部分が下がっていると、口が閉じにくい原因の一つとなるのですが、手術で皮膚とともに前方に動かして、閉じやすくすることができます。オトガイ部の知覚異常を生じることがあります。
2.上顎に行われる手術
Le Fort I 型骨切り術
上顎骨全体を、主に前方や下方、あるいは上方に動かす手術です。上顎が後ろに下がっていて顔面中央部の陥凹感がある場合や、顎のゆがみが上顎に認められる場合または下に伸びて歯茎が大きく見える場合などが適応となります。鼻の横から頬部にかけての皮膚に知覚異常が生じやすく、鼻の形が変わる・出血が多いなどの問題があります。
上顎骨延長法
Le Fort I 型骨切り術では、一度に前方に動かすことができる幅に限界があります。本法は大きな前方移動を必要とされる場合に、骨切りを行って延長装置を設置します。口腔内で延ばす場合と口腔外から引っ張る(頭に固定装置をつけます)場合があります。いずれも延長後に固定する手術が必要です。
外科的急速口蓋拡大術
上顎が著しく狭い場合に、骨に切れ目を入れて、口蓋につけた装置で徐々に拡げる手術です。装置の違和感に慣れるまで、食事や会話に支障を来します。拡大が終了したら矯正歯科医院で装置を除去します。
3.歯槽骨・個々の歯を動かす手術
前歯部歯槽骨切り術
小臼歯を手術中に抜いて、そのスペースを利用して前歯をブロックで後方に動かす手術です。固定用の入れ歯のようなプレートが歯の裏側に2カ月ほど入っています。犬歯や残った小臼歯が変色することがあります。また上下それぞれの唇にしびれが出ます。
歯槽骨部皮質骨骨切り術
矯正治療を円滑に進めるために動かしたい歯のまわりの骨に切れ目を入れる手術です。矯正治療が短期間で終わる、治療中の歯の痛みが少ないなどの利点がありますが、歯を損傷する危険性もありますし、自費で矯正をされる場合は手術も自費となります。
4.補助的な手術
下顎角形成術
いわゆるエラの部分が張って、かつ口が開けにくい方に行う手術(同時に筋突起という部分も切ります)で、美容目的だけの場合は自費となります。口の中から切開して手術は行われますが、出血しやすく、顎の下の血管を結紮(けっさつ)して止める場合があります。
舌縮小術
舌の幅や長さが原因で下顎が伸びている、上下が噛みあわないという方を対象に、骨切りの手術とは別の日に、舌の一部を切り取って縫い縮める手術です。術後は舌が大きく腫れ上がる、舌の感覚が鈍くなる、味覚が落ちるなどの問題があります。